ゆるふわ髄想録

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奮え 朋に捧ぐ命よ 鼓動を打て/鉄鋼団『STARLIKE』の戦闘システムについての考察

世の中に面白いビデオゲームは数あれど、ズドンと脳髄に電撃が走るような作品は珍しい。例えばそれは、洗練されたシステムをもつもの、ゲーム体験に新たな地平を切り開くもの、紡がれるストーリーとのシンクロ率が高いもの、などなど。

鉄鋼団『STARLIKE』は、そんな稀有な作品の一つだ。

戦後復興期の日本を思わせる異世界を舞台に
主人公・節子が「ハムスタア」を育て様々な試練に立ち向かう
異色の「育成バトル・アドベンチャー
 
ハムスタアの賭け試合にして 名も無き神の星祭
バラックの天幕の暗闇の中 人と獣と、獣と人
小さな戦士達の魂のバトルが始まる
 
鉄鋼団 - 作品情報

本作は順次エピソードが制作されてゆく連載作品であり、現在は第拾壱話までが公開されている。各話は基本的に二部構成であり、ハムスタアの育成やバイトに勤しむ「日常パート」をメインに物語が進行し、そのクライマックスに宿敵との「戦闘パート」が待つ。そんな本作のストーリーについては上記のリンク先をご覧いただくとして、このエントリでは「戦闘パート」の魅力を紹介したい。

まずは専門用語を整理しておく。本作では、賭け試合"スタアライク"で戦うハムスタアを”星”、星を育て戦わせる人間を”星工”、星工が星を戦わせることを"奮う"と呼ぶ。なお、"ハムスタア"はハムスターに似た架空の動物である。テストには出ないが覚えておこう。

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一見して分かるとおり、本作の戦闘システムはかなり特殊だ。しかし戦闘シーケンス自体はシンプルなターン制バトルである。①まずサイコロを振って(元々の素早さを加味して)先行後攻を決め、②トランプと同様のカードを駆使して相互に攻守のアクションを行い、③ターンの終わりに手札が5枚になるまで補充される、という流れを片方のHPがゼロになるまで繰り返す。また①〜③のフェーズには様々なオプションがあり、例えば②では、必殺技である「星奮」や、特殊効果カード「壊札」を使えたりする。

STARLIKEはこの戦闘システムが見事なのだ。正確に表現すれば、全ての要素が「STARLIKE」という物語を演出するために配置されている、という意味で見事なのだ。ドラクエの戦闘システムより凄いだとか、そういう比較をしたいわけではない。

まず戦闘画面を見てみよう。本作の戦闘パートは星同士のタイマンであり、星工である主人公・来宮節子は舞台の外縁にいる。だが肝心の戦闘画面は、どちらの視点でもない。プレイヤーは第三の視点で、格ゲーのように”平等な"バトル画面を見つめることになる。

しかし本作はビジュアルノベルではない。プレイヤーは第三の視点から、星と星工の双方の行動に部分的に介入できる。そして本作は、この”部分的に”の距離感が絶妙なのだ。以下、まずは介入のグラデーションを見ていく。

まず絶対に介入できないのが、星の「アクションの選択肢」の決定、すなわち③で配られるカードである。好きなカードが引けないことは当然のこと、予測はできてもコントロールはできない。また、カードは自動的に配られるため、そもそもプレイヤーはカードを引くことすらできず、引くのを待つことすらできない。これは極めて重要なポイントである。合理的に考えれば「引かない」という選択肢はほぼ不要*1に思えるが、自動か否かによりプレイヤーの物語体験は大きく異なるからだ。自分で山から追加のカードを引く場合、プレイヤーは星の「アクションの選択肢」の決定プロセスに部分的に関わることになる。他方で、強制的に目の前に5枚を広げられる場合、星の「アクションの選択肢」の決定プロセスはプレイヤーから完全に独立している。なお、星工ははどちらの場合も決定プロセスに関与していないことに注意していただきたい。

次に、ほぼ介入できないのが「先行後攻」の決定、すなわち①で振るサイコロである。プレイヤーにできることは、たかだかクリックして賽の目を確定させることだけだ。ただし①のカードと異なり、少なくともクリックという形での介入は存在する。また、プレイヤーは星工の星奮ゲージ(星奮に必要なゲージ)を消費することで、数値を上乗せすることもできる。ただし、これは星工を通した星への介入であり、プレイヤーの直接的な介入ではない。先制ボーナスである「星札」*2についても、運や環境を通じた間接的な介入にすぎない。なお、元々の素早さに大きな開きがある場合、そもそも賽の目に意味がなくなるため、プレイヤーは間接的にも実質的にも星に対して非介入となる。

これら二つに対し、むしろプレイヤーに主権があるのが「攻防アクション」の決定、すなわち②の5枚のカードの選択である。この選択が本作の戦闘の醍醐味でもあり、また純粋なゲームとしての面白さでもある。他方でそれは、物語から離れて記号に寄るということでもある。星のアクションを選択するとき、プレイヤーたる自分はどこにいるのだろうか。

ここにおいて、攻防アクションを「トランプ」で抽象表現していることに重要な意味がでてくる。感覚的に言い換えるなら、攻防アクションの選択と、実際の攻防アクションとの間に、トランプを”噛ませて”いるのだ。プレイヤーから見れば、あくまで選択しているのはトランプである。それは最適戦略を達成するためのパズルにすぎない。他方で星は、選ばれた最適戦略と”同じ”攻防のアクションを行う。しかし、そこにトランプはない。プレイヤーは星のアクションを決定しているが、パンチや武器攻撃というコマンドを選択しているのではない。視覚情報や物理的インタラクションとしては、あくまでカードを選択しているにすぎない。この関係を如実に表しているのが攻撃の相殺であり、同スーツ(♠♣♢♡)による攻撃の無効化は、ノーダメージではなくノーアクション(不発)で表現される。

さらに本作のトランプ攻防システムが巧妙なのは、一枚のカードで多様な戦術オプション(と攻防アクション)を表現していることだ。第一に、カードは攻防一体である。それは意思決定のトレードオフの面白さを生み出しつつ、攻撃と防御をさらに抽象化させることにも成功している。例えば、攻撃カードと防御カードが完全に分離されていれば、そのイメージ結合を以てカードの選択はコマンド入力と等価になる。第二に、カードはスーツごとに役割が異なる。例えば、黒スーツ♠♣は安定型(命中重視-防御行動)だが、赤スーツ♢♡はリスク型(威力重視-回避行動)の行動となる。加えて、黒スーツ♠♣の攻撃は素手、赤スーツ♢♡の攻撃は武器という、実際のアクションとしての差異まで絵的に具体化されている。第三に、ペアやストレートを作ることで、連続攻撃や連撃防御をおこなうことも可能である。こうした戦術オプションの多様性は、単純にゲーム設計として見事というだけではない。攻防一体のところでも述べたが、あるアクションと一意に結びつく抽象表現はコマンド入力と等価であり、逆にその解釈が多様であるほど、直接的に介入ないし操作している感覚が薄まるのだ。

以上が、プレイヤーの介入のグラデーションについての説明である。本作の戦闘システムでは、視点においても、介入の度合においても、純粋なゲーム部分においてすら、実際に死闘を繰り広げる星とプレイヤーが切り離されているのだ。

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百聞は一見にしかずということで、再び戦闘画面を見ていただきたい。切った張ったの意思決定はしつつ、あくまで星を”奮う”という物語空間を壊さない、という「距離感」の凄さがお分かりいただけただろうか。

しかし、これは本作の戦闘システムがもつ魅力の半分でしかない。その残り半分こそが「星奮」である。

STARLIKEという作品は、各話のクライマックスに戦闘パートが配置されており、戦闘自体も一つのストーリーのように展開していく。したがって、星奮は単なる戦闘システムのアクセントではなく、物語としても重大な役割を担うことになる。HPがゼロの状態から強化復活する「臨死応戦」は言うに及ばず、特定の条件を満たさなければダメージの通らない相手や、特定の星奮により発生するイベントなど、例をあげればキリがない。

そんな星奮は、星工が星の潜在能力を引き出すことで放つ必殺技である。しかし戦闘システム上ではプレイヤーが制御する。星奮ゲージという条件はあるものの、星奮の発動は極めて自由度が高い。言い換えるなら、プレイヤーの介入の余地が極めて大きい。

しかし星工はプレイヤーのアバターではない。プレイヤーが星工について介入できるのは(先行後攻での星奮ゲージ消費を除けば)星奮の”タイミング”だけである。

では、星工とプレイヤーの関係は何なのかという疑問が浮かぶが、その前にこれまでの議論をまとめてみよう。

STARLIKEの戦闘システムは以下の二層構造をもつと言える。

一層目は、トランプによる抽象表現を噛ませた、星の基礎アクションへの介入である。このレイヤーは、カードの引きという介入不可な要素に左右される要因が大きく、プレイヤーは変動を純粋な抽象ゲームとして遊び、その結果として戦闘シーンが進行する。

二層目は、星工というキャラクターを噛ませた、星の必殺技「星奮」への介入だ。このレイヤーは、他の要素に比べて極めて自由度(介入の余地)が大きく、プレイヤーは戦闘における突破口かつ物語進行のトリガーとして遊び、その結果として戦闘シーンが進行する。

このように、一層はランダムな環境下での数学最適を志向するが、二層は自由なタイミングで物語最適を志向する。一見すると二つのレイヤーは水と油である。物語最適を突き詰めるのなら、映画のように全てが制御された非介入コンテンツにするのが合理的だからだ*3

しかし、この二層を同時に上手く走らせることができれば、ランダム環境下で物語的最適が達成されたように見せかけることができる。言うまでもないが、これはメチャクチャ気持ちがいい。そして、そのメカニズムが巧妙に組み込まれているのが、STARLIKEの戦闘システムなのだ。

例をあげればキリがないが、タイマンと「臨死応戦」の親和性は極めて高い。四人パーティーのRPGと対比させれば分かりやすいが、臨死応戦の発動をランダムかつ物語的にするのに、ターゲットのランダム性はむしろ不要である。痺れる展開を演出するのために必要なランダム性は、相手の必殺技のタイミングだけで十分なのだ。

こうした巧妙な二層構造に目を向けると、星工とプレイヤーの関係性が見えてくる。先に述べたように、プレイヤーが星工について介入できるのは、星奮の"タイミング"だけである。これは言うなれば、カードを選んだ状態に近い。プレイヤーは物語のキーとして星奮のトリガーを引くが、その後の展開は、物語世界の星と星工に委ねられているのである。繰り返すが星工はプレイヤーのアバターではない。

星工・来宮節子は、星とプレイヤーを"奮う”のだ。

さて、最後に忘れてはならない「戦闘パート」の要素として、アツすぎる主題歌を載せておこう。演出について語りたいことも多いが、ネタバレすると楽しみが半減するので、泣く泣く削ることにする。

それでは皆さま、Let's Start "STARLIKE" !!

www.youtube.com

 

余談だが、元々はこのエントリのマクラとして、ビデオゲームにおけるインタラクティブ論考を書く予定であった。だが、予想外に筆と思考と時間が走りすぎたため、泣く泣く別エントリとして立てることにした。合わせて読んでいただければ幸甚である。

inmecha.hatenablog.com

 

おまけ1(第漆話までのネタバレ注意!!)

ハムスタアの名前について語りたい。

ぼくはキャラクターに名前をつけるのが苦手だ。最近こそ第一印象エイヤ!で決められるようになったが、少し前までは一時間以上も悩むことなどザラだった。とにかく世界観に違和感が生じるのが嫌でたまらなくて、デフォルトネーム設定の有無をCEROに盛り込むべきだとすら考えていた。

だけど「STARLIKE」は違った。なんとなく即決で「弁慶」と名付けることができた。

レビュー記事を読んでプレイしたので、事前に臨死応戦のイメージがあったからだろうか。その小く弱々しい身体に、あえて仁王の名前をつけたくなったのだろうか。それとも単なる思いつきだろうか。もう数年も前のことなので、確かなことは思い出せない。

でも、彼が「弁慶」の名に恥じぬ成長を遂げ、最後までその生き様を貫いたことは間違いない。そして「弁慶」という一等星を継ぐ、来宮節子の新たな星は「牛若」の名に相応しい姿であった。

これらは全て偶然かつ牽強付会な解釈で、作者はおろか僕自身すら意図したものではないのだけれど、ここには確かに「STARLIKE」の物語がある。そんな偶然が生まれるのも、ビデオゲームインタラクティブであることの面白さなのかもしれない。

 

おまけ2(拾壱話までのネタバレ注意!!)

戦闘メニューからでは名前しかわからないので、備忘録として星乗で使用可能な星奮一覧をまとめてみた。

星奮 カード 防御 回避 相殺
雌ハム 不如帰盾 - - - - 3ターン耐死
月下殺陣 1 ♢♡ 無効 JQKのどれかに変換して攻撃
臨死応戦背臨 1 - 無効 無効 無効 臨死応戦、星工HP全回(1回限定)
無明 無刀 1 ♢♡ - - - カウンター、低数字ほど威力+
忍音 - - - - - 星工&星奮ゲージMAX(1回限定)
雄ハム 臨死応戦・再臨 2 - - - - 臨死応戦、再発動(1回限定)
血奉十字 1 - 無効 無効 無効 HP消費(1回限定)
紅蓮愚連撃 1 ♠♣ 複製して2撃、2Hitなら毒+火傷
一番星A 1 - - - 1をAへ変換、絶対(逆)相殺
赤十字 双重颪 2 ♢♡2枚 無効 無効 無効 合成して攻撃
真・血奉十字 2 - 無効 無効 無効 HP消費(1回限定)
十字姫花天牛 1 ♢♡ 直近ダメージ上乗せ(1回限定)
公太郎 音破烈動 1 ♠♣ 無効 回避不能の一撃
音破虹蛇 2 ♠♣ 無効 複製して5撃
懲罰衝雷 2 ♢♡ 2ターン行動不能にする
ジャンガリアン トレモロ・デスクライ 1 ♢♡ 無効 ガード不能の一撃
カットオフ・レネゲイド 2 ♢♡ 無効 無効 無効 ヒット数は数字比較

*1:ぼくは理屈馬鹿なので断定を可能な限り避けたがる病気に羅患している。例えば、相手が手札をランダムに捨てさせる星奮をもつ場合、相手の行動パターンや残存カードの期待値を加味して、あえて引かないという選択肢は合理的でありうる。が、それは本題ではない。

*2:例えば、そのターンだけ命中力が上昇したりする。

*3:実際にそうしたビデオゲームも存在するが、概してゲーマーの評判が悪い。