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宇宙逃避航海日誌

Space Run A-Weblog

ぼくのかんがえたさいきょうのあーるぴーじー/『ホヤウカムイ』の感想

RPGホヤウカムイ」をクリアした。プレイ時間は約80時間。いやはや蛇神*1の名に恥じぬ恐ろしいゲームであった。

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ここは惑星「ノーラ」。三つの月を衛星として持つ地球よりちょっと小さな星。地球と似ているようで割と違う気がしないでもない環境を持つ色々な生き物が住んでいた惑星である。
数十年前のこと、その惑星「ノーラ」に「M.L.C」と名乗る者たちが異次元から侵略してきた。「M.L.C」は恐るべき力で、惑星「ノーラ」の世界各国を襲撃。そしてノーラのおよそ9割を掌握してしまった。 大気は濁り、緑豊かな森が砂漠へと変わる。生き物は飢え、汚染されたガスが空を覆い尽くす。生きる気力を飲み干す、渇きの大地。無慈悲にゆっくりと色褪せる詰んだ世界。 ようこそ、祈り届かぬ惑星「ノーラ」へ。
……以上の設定を微妙に活かしたり活かさなかったりで主人公をお家に帰す為にチーターや鈴虫などの個性的な仲間をランダムで召喚したりして塔を登るごく普通のシンボルエンカウントのターン制RPGです。
ホヤウカムイ4.1[フリーゲーム夢現]

本作はフリゲRPGの良いところと悪いところをドロドロに煮詰めたような怪作であり、500MBに満たないファイルに尋常ではない熱量と時間と空想が詰め込まれている。特にキャラと舞台設定の量が凄まじく、それだけで10本は作れるであろうリソースが惜しげもなく投入されており、具体的には100ヵ所以上のマップに100体以上の仲間と1000体以上の敵が登場する(しかも全て自作の絵)。また各キャラは12の種族のいずれかに属しており10以上の攻撃属性と15以上の状態異常に対して弱点と耐性がある。まさに「ぼくのかんがえたさいきょうのあーるぴーじー」である。 f:id:inmecha:20170514132410p:plainf:id:inmecha:20170514132412p:plain

さて、もし僕が商用ゲームのプロデューサーなら「90%削れ」と即答するだろう。そんなに強くないキャラクターはリストラし、一貫性のある設定にブラッシュアップし、種族や状態異常の種類は常識的な数に減らし、企画立案者を更迭する。絶対にだ。

しかし、こうした「ブレーキがブッ壊れていること」が本作の魅力であり、ひいては僕がフリゲをプレイする理由でもある。ぼくは別に面白いゲームがプレイしたいのではない。自分が実現したい「何か」のために狂気じみた熱量を投入し、それにより誕生したドロドロで胃もたれのする「何か」を味わいたいのだ。その意味で「ホヤウカムイ」は最高にぼく好みの作品であった(小ネタも含めて)。
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ちなみに本作はBGMの種類も豊富であり、特にボス戦の曲は粒ぞろいで素晴らしい。個人的なお気に入りは以下の三戦。

1つ目は絵本の魔女くーみゃ戦。ヴァイオリンをベースにしたメルヘンチックなBGM。オーソドックスな曲だが、ダンジョンの雰囲気からボス戦への導入も含めて完成度が高く素晴らしい。また初の隠しボス撃破ということもあって感慨深い。 f:id:inmecha:20170514123434p:plain

2つ目は融煙のドラグナイ戦。防御や速度補正スキルより速く行動してくる強敵。そのくせBGMは疾走感を抑えた渋い曲調で惚れる。時折ノイズが混じるのもグッとくる。 f:id:inmecha:20170514123433p:plain

3つ目は狂神のトゥリア戦。手に汗握る駆け引きとクラブミュージックを織り交ぜたような独特なBGMは単体でも素晴らしいが、謎にパーティーなポーズ、アホみたいに高い(が倒せないことはない絶妙な)ステータス、撃破後の意味深な台詞と、その全てが琴線に触れたベストバウト。否が応でも盛り上がる宿敵ナインズアクター戦でありながら、その予想をはるかに超えた完成度であり、この一戦だけで本作をプレイする価値がある。 f:id:inmecha:20170514123531p:plain
撃破後
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ただ本作が惜しいのは、100以上の仲間が登場するとはいえ、後半になればなるほど敵は凶悪になるので、仲間の数が増える一方、戦力となるキャラが限られてくることだ。本作の戦闘バランスはピーキーであり、敵ボスの火力はジンバブエドル並にインフレしていく(基本的に1ターンで壊滅)うえ、HPが減ると更に凶悪な攻撃を繰り出してくるので、おのずと「盾役の犠牲orストップなどのスキルで3ターンしのいで、バフをガン積みした瞬間最大火力で仕留める」という戦略が一部のボスを除いて最適解となってしまう。実際のところ、ほとんど以下の12人(左列は主人公&サポート、中列はアタッカー、右列はターン稼ぎ)の組み合わせでボスを倒すことができた。 f:id:inmecha:20170514122611p:plain

それでも勝てないボスはいたのだけど、これ以上は「面白さ<レベル上げの面倒さ」になりそうだったので時間の都合もありギブアップ。ナインズアクターの扉を抜けた塔の最上階でクリアとした。いやぁ面白くも恐ろしい作品だった。

*1:アイヌに伝わる蛇神で、洞爺湖など湖沼の主とされました。名前のホヤウは蛇、カムイは神を意味する言葉です。ホヤウやオヤウカムイともいい、神名はラプシヌプルクル(翅の生えている魔力ある神)、他にはサキソマエップ、サクソモアイェプ(夏には言われぬ者)という呼び名もあります。その姿は翼をもつ蛇で、胴体が俵のようで頭と尾は細く、体色は薄い墨色をしています。尖った鼻先は鑿のような役割を果たし、大木を伐り倒します。また常に悪臭を放っており、近寄っただけでも皮膚が爛れたり焼け死んでしまったりするといわれています」(出典:ホヤウカムイ : 【妖怪図鑑】 新版TYZ