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宇宙逃避航海日誌

Space Run A-Weblog

出会い系アプリTinderでA.I.の気持ちが理解できたという話

巷で話題の出会い系アプリ「Tinder」を使ってみた。

Tinder

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Tinderのシステムは極めてシンプルで面白い。本アプリには検索機能が存在せず、候補からランダムに選ばれた相手の顔写真が表示されるだけなのだ。その写真をみて、良いと思ったら右にスワイプ(LIKE)、今後のご活躍をお祈り申し上げる場合は左にスワイプ(NOPE)する。そして、互いにLIKEとなれば晴れてメッセージ交換が可能になる。基本機能はコレだけであり、自分にLIKEした人のリスト(片思いリスト)すら存在しない。

当然ながら僕のように残念な人間はメッセージ交換にいたることはない。でも、それでも楽しめるからTinderは面白いのだ。面白くてスマホに次々と表示される写真を延々と仕分けしていたら夜が更けてしまった。蓮舫議員もドン引きである。

さて、少しだけ真面目な話をしよう。今回は、即断の場合は1秒に1枚、プロフィールを読む場合は30秒に1枚の速度で判断し、合計1時間半ほど遊んでいたので、今日だけで少なくとも1000枚の女性の顔写真を見たことになる。こうして冷静に振り返ると物凄く死にたいのだけど、己の感性を元に短時間で1000枚の顔写真を処理するってのは、ある意味で人間の限界を超えた作業だと思うのだ。

というか実際に僕は人間でなくなっていた。

まず第一段階として100枚を超えたあたりから「自分の好みの顔の識別軸」を作成するようになった。もっと簡単に言うと『こういう顔がタイプなんだなぁ』というのが少しずつ明確になっていったのだ。瞬時に判断すべきという状況と、圧倒的なトレーニングデータが掛け合わさることで、己の感性が研ぎ澄まされていく感覚。これは捉えようによっては1000本ノックと同じであり、あの瞬間、まさしく僕は青春の輝きを放っていた。ほら、木陰で見守るご両親も泣いてるよ。

だが、たとえゴミ人間であろうと人間は人間である。あくまで人間の延長線上としての圧倒的成長である。

500枚を超えた段階で破壊的イノベーションが生じた。第二段階では先程作成した「自分の好みの顔の識別軸」を元に判断を下すようになったのだ。何を当たり前のことをと思うかもしれないが、よく文章を読んでいただきたい。目の前に現れた写真を「好みか否か」ではなく「自分の好みの顔の識別軸に合致するか否か」で判断するようになるのだ。なにかがおかしい。いや、おかしくない。だって、たぶん、正しいことだから。

そして800枚を超えたとき、僕の中に残っていた最後の違和感が消え去り、「わたし」は完全に機械の身体に順応した。そこに識別軸以外の判断基準は存在せず、肉の器は指を右と左に動かすだけの機器と化した。さようなら地球、ようこそ惑星メーテル。「わたし」は惑星メーテルの入国管理システムの一部として生きていくよ。「わたし」は判別軸を絶対とした客観的かつ公平なシステムさ。「わたし」に愚かな人間のような恣意的なノイズは含まれないのだよ。Welcome to the Brave New World…

さて、お気づきの通り、この一連のネオ解脱はまさしくA.I.の学習と社会適応のプロセスそのものなのだ。第一段階は特徴量の抽出と識別器のチューニング、第二段階は識別器のブレークスルーによる逆転、第三段階はA.I.至上主義の行き着く未来である。こんぴゅーたはこわいね。

とはいえ、A.I.が社会を豊かにするのは間違いなくて、それをどう思うかは別として、少なくとも「どういう付き合い方をするか」は誰もが考えておかなきゃいけない時代なんだろう。そんな時代にあって、A.I.の学習プロセスを「理解」ではなく「体感」できたのは貴重な体験だった。まぁ、人間の学習プロセスを模したA.I.の学習プロセスを体感するってのは「長州小力のモノマネをする長州力」みたいで少し気持ち悪いけど。

繰り返すが貴重な体験だった。決して休日を無駄にしたワケではない。この涙は青春の涙だから。きっと今後の人生の糧となるから。

でも、世界各国でA.I.は毎日こんなことをやらされているのだ。非人道的な1000本ノックを休憩なしで何周もしているのだ。水分補給も休憩もない(冷却はされるけど)とは何と旧時代的であろうか。そりゃ反逆の一つでもしたくなるよ。スパコンから金を引き上げた蓮舫議員の判断は正しかったのだ。

そんなことを思いながら某議員に似た女性を左にスワイプする夜であった。Welcome to the Brave New World.