宇宙逃避航海日誌

Space Run A-Weblog

ドキ!執行役員だらけのカラオケ大会!/アニソン定額聴き放題サービス「ANiUTa」の記者発表会からみる今後のサービス展開

アニソン専門の定額配信サービスANiUTaがついにリリースされた(2017/03/24)

www.youtube.com

本サービスはアニソンレコード会社10社(フライングドッグ、エイベックス・ピクチャーズKADOKAWAサンライズ音楽出版東映アニメーション音楽出版東宝、フロンテイアワークス、ポニーキャニオンマーベラスランティス)が共同で設立した「株式会社アニュータ」により運営されており、有料会員(月額600円)になると5万曲の以上のアニソンが聴き放題になる。
なお、コロムビアソニーミュージックキングレコードの3社は参加していない。

さて、このANiUtaの記者発表会には動画アーカイブがある*1のだがコレが非常に面白かった。ネタ的な面白さもありつつ、アニソン業界の研究としても興味深い1時間であった。以下、「紹介作品からみる記者発表会」と「ココが見所!記者発表会!」の2つの切り口で記者発表会を紹介し、最後に「来月あたりにコロムビアソニーミュージックキングレコードの3社も(部分的に)参画するのでは」という観点から本サービスの今後の展開を予想する。

 

紹介作品からみる記者発表会の概要

まずは本発表会で紹介された作品の一覧をみていただきたい。なお、PVに登場した作品は登場順、パワーポイントでのみ紹介された作品は50音順に並べている。

作品名 レーベル 紹介 初配信
ラブライブ!サンシャイン!! ランティス PV
マクロス フライングドッグ PV
ユーリ!!! on ICE エイベックス・ピクチャーズ PV
進撃の巨人 ポニーキャニオン PV
Free! ランティス PV
創聖のアクエリオン ビクターエンタテインメント PV
Wake Up, Girls! エイベックス・ピクチャーズ PV
けいおん! ポニーキャニオン PV
マクロスF ビクターエンタテインメント PV
ラブライブ! ランティス PV
あんさんぶるスターズ! フロンティアワークス パワポ
おそ松さん エイベックス・ピクチャーズ パワポ
ガールズ&パンツァー ランティス パワポ
艦隊これくしょん -艦これ- KADOKAWA パワポ
キラキラ☆プリキュアアラモード マーベラス パワポ
らき☆すた ランティス パワポ
機動戦士ガンダムシリーズ サンライズ音楽出版 パワポ
涼宮ハルヒの憂鬱 ランティス パワポ
弱虫ペダル 東宝 パワポ

ランティス強し。

アニュータ代表の佐々木史郎氏(現フライングドッグ代表取締役社長)は、アニュータ立ち上げの経緯として、1〜2年前からランティスの井上社長(など)と話をしていたと述べており、初期参画企業としてランティスが強い発言権をもつポジションにいることが伺える。

実際に今回の記者発表会でも紹介されている作品の数が群を抜いて多いし、PVはラブライブに始まりラブライブに終わる一方、ミリオンライブ!の楽曲は配信しないなど(コロムビアに配慮したのか?)提供作品のコントロールもできている。

紹介作品を見る限り、ANiUta座組のキーパーソンはランティスで間違いないだろう。

 

ココが見所!記者発表会!

今回の記者発表会は二部構成になっており、前半は女性声優5人が「ANiUtaをどういう風に使っていきたいか」などを語るインタビュー、後半は各社の執行役員等の挨拶という極めてオーソドックスなものであった。

前半の女性声優インタビューについては、「若くてお金がないのでありがたい」(鈴木みのり)、「自分のラジオ番組に来るゲストの楽曲を下調べするときに便利」「ライブで自分の楽曲以外を歌う機会があり歌詞を確認しつつ聴けるのが便利」(三森すずこ)、「ライブで共演する方の予習復習ができて魅力的」(吉岡茉祐)、「スマホの容量が足りないのでストリーミングで聴けて嬉しい」(駒形友梨)など、いやに現実的な発言が目白押しで面白いのだが、本記者発表会の真髄は別のところにある。

それはカラオケ大会と化した役員挨拶である。

本パートは、まずアニュータ代表の佐々木史郎氏による事業紹介で幕を開けた。
佐々木氏は「サブスクリプション(定額)サービスは基本的に曲があるほど良いが、ANiUTaはジャンル限定のサービスであり、全国チェーンの大型ショップではなく専門店である」や「専門店ならではの品揃えやサービス、なによりアニソンへの愛が売りになる」など、主に他の定額配信サービスとの差別化を強調しつつ事業の方向性を語り「お客様は、みんな僕たちと同じ、アニソンのフレンズなんだね!」で締める素晴らしい挨拶であった。

ここまでは良い。和やかな記者発表会である。

しかし、次いで紹介されたエイベックスの副社長の方が第一声で「好きなアニソンはマジンガーZです」と発言したことにより、突如、記者発表会は各社執行役員のカラオケレパートリー紹介コーナーと化してしまったのだ。

以下、各社重鎮の十八番を掲載しておく。接待の際にはぜひ参考にしていただきたい。

会社名 役職 レパートリー 配信
エイベックス 副社長 マジンガーZ
KADOKAWA 代表取締役 誰がために
ジャングル大帝
あしたのジョー
力石徹のテーマ
サンライズ音楽出版 代表取締役 -
東映アニメーション音楽出版 取締役 (他社作品ですが)ガッチャマン
東宝 取締役 カムイ外伝の)忍びのテーマ
フロンティアワークス 代表取締役会長 西遊記の歌 ?
ポニーキャニオン 代表取締役社長 銀河鉄道999神曲です)
マーベラス 常務取締役 プリキュアの楽曲
2.5次元ミュージカルの楽曲 ?
ランティス 代表取締役社長 Aqoursの楽曲(勉強中です)

…ほとんどの楽曲がANiUTaで配信されていない。それでいいのか十傑集。

面白いのはランティスの方だけいわゆる「正解」の回答をしていることだ。 やはり10社の中ではランティスがANiUTaに相当のリソースを割いているのだろう。

 

今後のサービス展開予想

個人的に最も興味深かったのは代表・佐々木氏の以下の発言である。

…いろんな形で芋づる式に聴いてもらえると嬉しいな。
例えば、まぁ弊社で言うと、マクロス⊿でファンになった方に、前のマクロスF(フロンティア)を聴いてもらったり、で、そのマクロスFが好きになったら、じゃあ中島愛ちゃんとかMay'nちゃんのオリジナルのアルバムを聴いてもらったりとか…

とても当たり前のハナシなのだが、レコード会社が重視するのは「アニソン業界」であって「アニメ業界」ではない。すなわち「アニメ作品のファン」ではなく「アニソン歌手のファン」を増やすのが目的であり、理想は作品の関与なくして純粋に所属タレントの歌だけが売れることである。この発言からは、そんな本音が垣間見えたように思えた。

ただ、僕としてはANiUTaには広くアニメ産業を利するプラットフォームとなってほしいと願う。というのは、本サービスは「アニメ産業界初の作品交流プラットフォーム」となりえるからだ。

情報通信技術の発達により僕たちはブログやSNSを通じて他のファンと交流できるようになったが、そのプラットフォームの殆どはアニメ産業の外側にあったように思う。それは各社のブログサービスであり、Youtubeニコニコ動画であり、mixiTwitterであり、感想まとめサイトであった。全てを製作サイドがコントロールすることが望ましいと言えないのが本業界の難しいところではあるが、消費者と製作サイドの間に異なるインセンティブをもつ(PVを稼ぐために過激な見出しや中身のないコンテンツを大量に生み出す)プラットフォーマーが存在することは、害のほうが大きいのではないかと最近は思っている。

ただ、権利関係がスパゲッティしている業界であるから、共通プラットフォームを作ることはG20各国を一つの国に統合するレベルの難易度であることは明らかだ。その点、アニソン業界という一部ではあるが、競合他社が協力して共通プラットフォームでコンテンツを提供する取り組みが出てきたことは非常に素晴らしいことだと思う。

だが、だからこそ、惜しいのだ。本サービスにコロンビア、ソニーキングレコードが参画していないことが惜しいのだ。

私見を述べると、ANiUTaがアニメ産業界初の作品交流プラットフォームと成るためには「現在放送中のアニメ作品の主題歌が全て聴き放題」となることが必須である。

それは放送期間限定でも構わないし、TVサイズであっても構わないし、何ならそれ以外の楽曲が聴けなくても構わない。大事なことは「現在放送中の全作品が聴き放題」であることだ。そうすることで、本サービスは現在リアルタイムでアニメ作品を視聴している消費者の導線を一挙に獲得することが可能になり、非常に強力なプラットフォームとなるのである。

そもそも聴き放題サービスとアニソンは非常に相性が悪い。

聴き放題サービスの最大の敵は、現在すでに利用している音楽プレーヤーだ。聴きたい曲に合わせてプレイヤー(アプリ)を使い分けるというのは、一般的な感覚としては非常にストレスフルであると思う。言い換えるなら、聴き放題サービスへのスイッチングコストの大半は「現在のプレイヤーで聴いている曲が聴けなく(聴きにくく)なること」である。いままで無料期間に利用してはみたが結局はアンインストールしたサービスを思い返していただきたいのだが、そのサービスが独自のアプリを利用するのではなくて、自分が現在利用しているアプリの楽曲リストに追加される形式で提供されていれば、果たして貴方は解約していただろうか。

アニソンと既存の聴き放題サービスの相性が最悪であったのは、アニソンというものが得てして作品単位で消費されるコンテンツであるにも関わらず、権利関係が異常に複雑であったことだ。つまり、他ジャンルの楽曲に比べて「これを聴きたい」という一曲の価値が極めて高いのがアニソンであり、ゆえに漏れの生じる既存の聴き放題サービスは(そもそも配信の絶対数が少なかったこともあり)スイッチングコストが高すぎるというのが課題であった。

だが全ての作品の全楽曲を聴き放題とするのは(主に月額料金の観点から)現実的ではない。だからこそ「現在放送中の全作品」だけを完璧に揃えることが重要なのだ。

本サービスは既存の音楽プレイヤーアプリを代替することを目指すのではなく、リアルタイムに放送されるアニメ作品を楽しむためのプラットフォームを目指すべきだと僕は考えている。本サービスは「ライト層」を対象にしているらしいが、具体的には現在放送されているアニメの主題歌1曲だけをYoutubeで聴くような層を指しているのだろう。
ライブラリが積み重なる買切モデルと差別化するためには「最新の曲を楽しめること」を価値の中心に置くべきではないだろうか。すなわち「いろいろな楽曲を楽しむためのアプリ」ではなくて「今期で気にいった作品の主題歌を聴くためのアプリ」としての価値を徹底すべきということだ。

さて、2017年冬アニメが終わらんとするこのタイミングでのリリースは(Anime Japan 2017のビジネスデイに合わせただけかもしれないが)2017年春アニメ開始を見越したβテストであることは明らかだ。すなわち、冒頭で述べた「来月あたりにコロムビアソニーミュージックキングレコードも(部分的に)参画するのでは」の「部分的に」とは、2017年春アニメの主題歌に限って楽曲提供がなされるのではないか、という意味だ。

もし本当に現在放送中の全作品が聴き放題となれば、アニメ産業史に残る快挙である。ぜひ頑張って交渉していただきたい。

繰り返すが現在ANiUTaはβテスト期にある。
だから、起動のたびにパスワードを求められたり、立ち上げた瞬間に落ちたり、今日に至っては昼ごろから一度も起動即落ちを繰り返して全く使い物にならなかったり、現状かなりアレなことはβテストだと思って許してほしい。夜明けは近い。来月になれば素晴らしいアプリになるはずだ。本当に期待しているので関係各社は頑張っていただきたい。何卒よろしくお願いいたします。

ちなみにデラーズ提督の演説がいつでも聴けるのでコレだけでも加入する価値はある。

ジーク・ジオン。

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