宇宙逃避航海日誌

Space Run A-Weblog

三者三様アクエリオン/『創生のアクエリオン』『アクエリオンEVOL』『アクエリオンロゴス』の見所解説

創聖のアクエリオン』ほど知名度に反して中身を知らない人間が多いロボアニメもないだろう。「一万年と二千年前から愛してる」でお馴染みの主題歌はアニソンの枠を越えて一般に浸透し、セクシーな女性が「あなたと合体したい」「気持ちいい」と叫ぶガンギマリなパチンコCMは全国の御茶の間とウブな青少年の股間に強烈なインパクトを与え、その脳内にアクエリオンの名前が刻まれることとなった。

しかし、そうしたアクエリオンを知る人々のなかで、果たして何人が本編を視聴したことがあるのだろうか。また、実際に『創聖のアクエリオン』を観た人のうち、次作の『アクエリオンEVOL』や『アクエリオンロゴス』まで観た人はどれくらい存在するのだろうか。僅かなデータから少なからず言えそうなのは、そもそも世の皆様方は初代アクエリオンを観ておらず、シリーズを重ねるたびに視聴者数が減少していったということだ。

初代 EVOL ロゴス
配信時の話数(EVOLは1話と2話を合わせて配信) 26 25 26
バンダイチャンネル:総再生数 188,882 62,565 9,887
バンダイチャンネル:総再生数(1話あたり) 7,265 2,503 380
バンダイチャンネル:お気に入り数 683 470 140
Dアニメストア:気になる登録数 8,152 5,812 4,770

※データは2017/03/11時点のもの

僕は悲しい。アクエリオンという作品が衰退して次回作が作られないことが悲しい。そして何よりも、世の皆様方がアクエリオンという作品を誤解していることが悲しい。

アクエリオンはSFロボットアニメではない。カッコいいロボットアニメでも、ましてや、お色気ロボットアニメでもない。そもそもアクエリオン三部作は各々が違うジャンルの作品だ。『創聖のアクエリオン』はギャグ漫画、『アクエリオンEVOL』は少女漫画、『アクエリオンロゴス』は少年漫画なのだ。

本エントリでは、世に蔓延する誤解を解くため、極めて個人的な感性でアクエリオン三部作を紹介しようと思う。できるだけネタバレはしないように書くつもりなので、安心して続きを読んでいただきたい。

 

創生のアクエリオン:ギャグ漫画

あなたと合体したい…
創聖紀0011年。蘇った“堕天翅族”は、生体エネルギー“プラーナ”を摂取する為に人間を捕獲していた。対する人類は、1万2千年前に堕天翅族を滅亡させた伝説の兵器“ベクターマシン”を発掘する。そして、10代の少年少女たちが操るベクターマシンは合体する時を迎え、“機械天使アクエリオン”となるのだった…。
「創聖のアクエリオン」 | バンダイチャンネル

アクエリオンを代表する曲といえば、間違いなく前期OPの「創聖のアクエリオン」である。歌い出しの「世界の始まりの日 生命の樹の下で くじらたちの声の遠い残響 二人で聞いた」や、サビの「一万年と二千年前から愛してる」など、愛をテーマにした幻想的なアクエリオンの世界観が絶妙な歌詞で紡がれた名曲だ。

しかし『創生のアクエリオン』という作品の本質を表しているのは、むしろ後期OPの「Go Tight!」だと言いたい。本曲の歌い出しは「Go tight 正体不明のshow time 絶体絶命浴びせたい 愛の疾走」「逆光の降る丘で愛の起源を説いて きみと僕のためなら Shake it down, Shake it down」である。

この歌詞、全く意味が分からない。しかし圧倒的な疾走感がある。そして否応なく何かに納得せざるをえない。

これが初代アクエリオンの魅力である。何に納得したかは分からないが圧倒的な勢いで何かを納得させられてしまう、そんな「超屁理屈パワー」が本作の見所なのだ。

アクエリオンのエピソードは基本的に、①基地司令の命令で意味の分からない特訓をする、②敵が現れて出撃するもボコボコにされる、③基地司令の有り難いお言葉で特訓の意味に気づき新必殺技で大勝利、の三幕構成なのだが、③で登場するのが「超屁理屈パワー」である。「三本の矢でも折れるときは折れるが、各々が違う方向を向けば立体と成り折れない」という有り難い言葉で三次元殺法を編み出し敵を撃墜。大勝利。これがアクエリオンである。

こうして文字に起こすと我ながら意味がわからないが、本編では神話を想起させる壮大なBGMや耽美的な精神世界の描写のせいで「超屁理屈パワー」に妙な説得力があるだから凄い。やっていることは気合で敵を月まで殴り飛ばすだけなのだが、悔しいことに視聴者はそこに人間の力強さや神々しさを感じてしまうのである。

初代アクエリオンはギャグ漫画だ。しかし、視聴者は面白いから笑うのではない。笑うしかないから笑うのである。

そもそも本作の主役ロボである「機械天使アクエリオン」からしてギャグである。腕が月まで伸びて敵を月面に叩き込む、皆さんご存知の無限拳をはじめ、数多くのハチャメチャな必殺技を繰り出すアクエリオン。本機はゲッターロボよろしく三機の戦闘機が合体して三通りの形態になるのだが、驚くことにキチンと完全変形するのである。なんでだよ。なんでそこだけリアルを追求したんだよ。

ちなみに「超屁理屈パワー」の面白さが最高潮となるのは、一話完結のエピソードが増える物語の中盤だ。その反面、物語の本筋が進む序盤や終盤はそんなに面白くない。そこもまた、初代アクエリオンの魅力ではあるのだが。

怒涛の力押しで笑わせに来る「超屁理屈パワー」を、是非ご自身で味わっていただきたい。

 

アクエリオンEVOL:少女漫画

それは、禁じられた合体――― 1万年と2千年が過ぎて後…… 終わりを抱いた神話が「禁じられた合体」を呼び覚ます!
かつての激戦が神話となって1万2千年後。「異次元」から襲来するアブダクターに人々はおびえていた。これに対抗する合体兵器「アクエリア」もエレメント候補生も男女間の恋愛や合体は禁止されていた。だが、アマタとミコノの出逢いが、全てを変えていく…。
「アクエリオンEVOL」 | バンダイチャンネル

「愛」という深遠な概念を背景にした前作と異なり、本作では等身大の「恋」を中心に物語が展開されていく。主人公のアマタくんとミコノさんの初々しい関係性を中心に、思春期の少年少女の微笑ましい恋愛が描かれており、前作に比べて恋愛描写が非常に多い。ゆえに、本作は少女漫画のようなアクエリオンなのだ。

嘘である。それでは昭和の少女漫画だ。

本作ではドロドロの恋愛が描かれる。それゆえ少女漫画のようなアクエリオンなのだ。ネタバレになるので具体的なことは書けないが、本作は物語が後半に進むにつれ、これでもかと痴情がもつれてゆき、昼ドラ顔負けの情念に世界が支配されていく。そして、そんな恋愛地獄の果てに待ち受けていたのは、誰も予想だにしなかった衝撃の真実なのであった…

本作はアクエリオンらしくなく第1話(+2話)が非常に面白く、ボーイミーツガールのロボアニメの導入としては最高峰の完成度だ。また、本作においても「超屁理屈パワー」は健在であり、一話完結エピソードの出来も良い。

ただ、あらゆる続編がそうであるように、本作もまた賛否両論の作品である。曲は文句なく良いのでサントラは買いましょう。

  

アクエリオンロゴス:少年漫画

叫べ、創声合体――
TVアニメの第3シリーズ。文明の発達はロゴスワールドを肥大化させ、文字の暴走を引き起こした。これに対抗できるのは「創声力」と呼ばれる、真理の力を引き出せる創声部の若者たち。阿佐ヶ谷に住む少年「灰吹陽」は、文字の暴走に遭遇し、現実世界に波及する混乱を前にして、運命の声を発した。
「アクエリオンロゴス」 | バンダイチャンネル

最新作アクエリオンロゴスは、これまでの世界観を一新した挑戦的な作品であった。アクエリオンに搭乗するのは阿佐ヶ谷の声優カフェのスタッフ、秘密基地は声優カフェの隠し部屋、敵は謎の空間にいる文字のお化け、しかも新たなアクエリオンは二機合体。あまりの衝撃にサンゴッドVギャグマンガ日和)かと思ったのは僕だけではないはずだ。

これまでの二作に比べるとスケールの小さい本作、前半は延々と一話完結の小話が続くのだが、コレがビックリするほど微妙なのである。話そのものは綺麗にまとまっているのだが、その摩擦のなさが微妙さに拍車をかけており、とにかく語ることがない。

その代わり、本作は物語後半に怒涛の展開が待っている。いままでのヌルい小話から一転、突如キャラクターに火が灯り、物語は伏線を回収しつつ加速し、勢いそのまま一気に最終回を迎えることとなる。

詳しいことはネタバレになるので書けないが、主人公の挫折、ライバルの覚醒、出生の秘密、幼き日の約束、過去からの因縁など、アツい少年漫画の要素がコレでもかと詰め込まれ、最終回まで途切れることなく高熱量の展開が続く。これで燃えなきゃ男の子じゃないよ。

本作の前半は確かに微妙である。しかし、テコ入れ後のストーリーは一見の価値があり、それは前半の修行パート(鍛えるのは視聴者の心)を耐えるに値する出来である。

 

おわりに

以上、アクエリオン三部作を紹介した。dアニメストアで三作とも配信されているので、是非アクエリオンの「超屁理屈パワー」を体感していただきたい。