宇宙逃避航海日誌

Space Run A-Weblog

スフィクスとの長期的な意識リンクが青年期の男女にもたらす精神変容に関する実証研究:黒のリヴァイアス事件の会話データを用いて/『無限のリヴァイアス』でテキストマイニング

2017年も既に六分の一が過ぎ去ってしまったが、アニメ『無限のリヴァイアス』のBlu-ray BOXが発売される気配がない*1。去年の8月頃に一度だけ「2017年に発売決定」との告知があったが、それ以降まったく音沙汰がなく不安である。

誤解が無いよう言っておくと、僕の中で本作は「とても面白いが二度と観たくない」というカテゴリに分類される作品だ。理由は胃もたれが凄いから。

それでもBlu-ray BOXが欲しいのは、観るためではなく燃やして供養するためである。より画質の良いメディアで火葬することで、より濁りなき魂を天界へ送り出すことができるのだ。しかし、僕が本作を観たのは数年前であり、正直なところ忘れている部分も多い。なので、いざ発売されても儀式に身が入るのか不安だ。中途半端な気持ちで燃やした結果、高解像度な地縛霊になられても困る。だが、バケモノのような本作を再び観返すのは精神的に厳しい。何としても避けたい。

そんなワケで、会話データをテキストマイニングすることで『無限のリヴァイアス』全26話を視覚的に要約してみることにした。以下、ネタバレ注意。

 

無限のリヴァイアスとは 

巨大戦艦リヴァイアスに閉じ込められた子供達。閉鎖空間で懸命に生きる少年少女を描くストーリー。

人工衛星リーベ・デルタが、ゲドゥルトの海へと沈下し圧漬する事件が発生。リーベ・デルタで訓練を受けていた487名の少年少女たちは、謎の巨大航宙艦「リヴァイアス」に乗り込み、大人を失った状況下で救助が来るのを待ち続ける。だが、彼らは行く先々で攻撃を受け、生き延びるために戦うことを余儀なくされる……。

「無限のリヴァイアス」 | バンダイチャンネル

本作の見どころは、閉鎖空間内で繰り広げられる人間ドラマと、巨大ロボ「ヴァイタル・ガーダー」の一風変わった戦闘シーンの二つだ。

人間ドラマについては語ることが多すぎるので、ここでは主人公を紹介するにとどめておく。本作の主人公は被暴力卑服従系男子こと相葉昴治くん(16歳)だ。巻き込まれ体質の彼は、閉鎖空間となったリヴァイアス艦内で、次々とヘビーなトラブルに巻き込まれていく。

以下、具体的なトラブルを列挙してみよう。まず、昴治くんはとにかく殴られる。弟のユウキくんには挨拶代わりに殴られるし、支配階級に取り入ったは良いものの、艦内はヘイト全開のシンボルエンカウント状態で、道を歩けばモブキャラにボコボコにされる。ちなみに彼が殴られた回数を数えるだけの動画があるのだが、コレで物語の大筋が分かるのが悲しい。

だが、そんな昴治くんにも、心を許せる人間がいた。親友のイクミくん、恋人のファイナ様、幼馴染のアオイちゃんの三人だ。もちろん全員トラブルを起こす。

気のいい親友イクミくんは、恋人がオトモダチにチョメチョメされたことで突如プッツン。プッツン銃で昴治くんの伝説の右肩(球速たぶん60km/h)を再起不能にしてしまう。美人な恋人ファイナ様は、実はアレな宗教の教祖サマという素敵な裏稼業を営んでおり、機嫌を損ねた昴治くんは聖母アルネの教え(物理)でプッツンされかける。かわいい幼馴染アオイちゃんは、そんなデスパレートな状況下で呑気にヒロイン顔で寝ていたので、プッツン未遂されてプッツンしてしまう。

以上が昴治くんの巻き込まれた主な人間関係のトラブルだ。とにかく多い。そして重い。もちろんこれ以外にも色々とエピソードはある。胃もたれが凄い。まさにトラウマ界のラーメン二郎である。 

本作のもう一つの魅力は、そんなドロドロの人間模様の合間に挟まる、独特な宇宙戦である。何が独特なのか。それは操縦方法である。

本作に登場するロボット「ヴァイタル・ガーダー」は、重力制御が可能な超テクノロジーの塊であるが、なんとコイツは手製のプログラムで動くのだ。思考をダイレクトに反映するシステムでも、思いや気持ちに反応する謎システムでも、命と引き換えに絶大な力を得る(ただし登録後に説明される)システムでもなく、単なるプログラムである。本作ではソリッドと呼ばれる三次元プログラミング言語を用いて、少年少女が共同でプログラムを組み、まさに皆の力を合わせて巨大ロボを動かすのだ。

嘘である。現実のIT産業を反映してなのか、本作では戦闘プログラマーにも上流と下流の階層があり、明確なヒエラルキーがある。上流は広大なメインルームのリクライニングチェアで作業する一方、下流はタコ部屋に詰め込まれて上流の怒号を受けながら下位モジュールを組み立てるのだ。目から涙がウォーターフォール

ちなみに昴治くんは実技は無能なのでプログラムは組まない。オペレーターとしてブリッジで教祖とイチャコラしながら、思い出したように殴られるのが彼の仕事である。

 

分析の概要

黒のリヴァイアスをはじめとしたヴァイア艦には、スフィクスと呼ばれる生体ユニットが組み込まれている。作中で描かれるスフィクスの行動原理は謎であり、たまに人間の姿(セクシーヴァイオレット巻貝ガール)で現れては、電波言語を発して消えるという奇行を繰り返す。

それだけなら良いのだが、厄介なことに、コイツらは乗船者の精神をプッツンするマジの毒電波を発しているのだ。なお、序盤からプッツンしてる教祖がいるのは気のせいである。

操縦者と長い時間リンクしていると「バックヤード」という精神支配をされてしまう。バックヤードが浅いうちは「好戦的になる」「情緒不安定になる」で済むが、影響を受け過ぎると、ギッターのような廃人になってしまう危険性がある。

無限のリヴァイアス | 用語解説

 本エントリでは全26話(ちなみに本作は各話をSere◯と呼称する)を通じて、会話内で使用される単語の変遷をもとに、物語を視覚的に要約することを試みる。ついでに、上記のバックヤード現象が生じていたのかも検証する。なお、データは本作の全セリフをゲフンゲフンしたWebサイトのものを用いた。

 

分析結果

各話の全セリフの形態要素解析の結果(固有名詞は辞書に登録済み)のうち、出現数が10以上であった単語を元に主成分分析を行った*2。本エントリでは、その結果のうち第1主成分(PC1)と第2主成分(PC2)に着目する*3

まず、各話のPC1とPC2を、戦闘の有無によって色分けしてプロットしてみた。赤は(ほぼ)戦闘なしの回で、緑はヴァイタル・ガーダーを用いない戦闘、青はヴァイタル・ガーダーを用いた戦闘のある回であることを表す。

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図から明らかなように、ヴァイタル・ガーダーを用いた戦闘のある回(Sere09,10,14,15,18,24,25)は、PC1が負で、PC2が正の値をとる傾向にある*4。また、回が進むにつれて、PC1とPC2の双方の値が増加する傾向も見られる。

では、PC1とPC2はどのような単語の傾向を表しているのだろうか。以下に、分析に用いた566単語の主成分負荷量をプロットしてみた。

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上図から分かることは、例えば「ヴァイタル・ガーター」という単語の出現頻度が高ければ、PC1の値は低くなり、PC2の値が高くなるということだ。

PC1は意識や会話の対象を表しており「艦内の世界(人間)であれば正、艦外の世界(物質)であれば負」の値をとる主成分である。例えば、上図の左半分には「ヴァイタル・ガーター」「敵」「軌道」「ゲドゥルト」といった世界や物質に関する単語、右半分には各キャラの名前や「どうして」「いい」「なんで」といった人間に対して発する単語が塊になっている。

PC2は言葉の強さを表しており「力強い単語であれば正、柔らかい単語であれば負」の値をとる主成分である。例えば、上図の上半分には「守る」「力」「正しい」「違う」といった単語、下半分には「じゃあ」「よろしく」「うん」といった単語が集まっている。

以上を踏まえたうえで、本作の物語を視覚的に要約する。

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まずSere01〜08は「リヴァイアス搭乗〜ヴァイタル・ガーダー出撃」までである。Sere01〜05は序盤であるから、PC1(対人間)は中立的で、PC2(言葉の強さ)も低い。ただし、リヴァイアス襲撃(Sere06〜08)からは次第にPC2(言葉の強さ)の値が上昇しつつ、PC1(対人間)が減少するようになる。胃が痛い。

Sere09〜18は「ヴァイタル・ガーダー初陣〜こずえ事件」までである。この時期は敵艦の襲撃(艦外の問題)と内輪モメ(艦内の問題)が立て続けに起こる生き地獄だ。人の業を凝縮したエスプレッソを、大ジョッキで三杯も呷った挙句に、Sere18のラスト・オーダーで視聴者は刻の涙をみる。胃の感覚がない。そんなワケで、PC2(言葉の強さ)を高く保ったまま、PC1(対人間)が正に負に振れまくるのがSere09〜18である。

Sere19〜26は「逆襲のイクミ〜エンディング」までである。まず、プッツンしたイクミが、Sere19でPC1(対人間)とPC2(言葉の強さ)の最高得点を叩き出す。それ以降はPC2(言葉の強さ)を高く保ったまま、Sere24と25までPC1(対人間)が正の方向に振れっぱなしになる。いよいよ地獄ここに至れり。胃という概念はアカシック・レコードから削除されました。なお、PC1(対人間)が正の方向に振れているのは、ストレスと毒電波で皆がプッツンしだしたというのが妥当な解釈なのだろうが、戦闘に慣れてしまい、黙々と敵を滅殺することが可能となったことも少なからず影響を与えているだろう。

以上が単語の遷移と物語の流れである。

本作では回が進むごとにPC1(対人間)とPC2(言葉の強さ)の双方が増加する傾向がみられる。すなわち、黒のリヴァイアスの搭乗者たちは、艦内で過ごすうちに、強い言葉で他者とコミュニケーションするようになっていったということだ。したがって、リヴァイアス事件において、乗組員の青年たちにバックヤード現象が生じていた可能性は極めて高い。 なお、どこまでが極限状態そのものが与えるストレスの影響で、どこからがバックヤード現象かは区別できないため、その点には留意する必要がある。

 

おわりに

大人の都合で閉じ込められて、漂流させられた挙句に襲われて、大人のいない世界で大人みたいに社会をつくる真似事をして、それでも青年期ゆえの未熟さで台無しにしてしまって、最後の最後は大人に助けられて夢から覚めるように航海が終わる。身も蓋もない言い方をすると『無限のリヴァイアス』とはそういう話である。

ただ、本作は最終回(Sere26)が一話すべてエピローグに割かれており、上記の出来事を乗り越えた乗組員の姿がじっくりと描かれている。さて、彼らはどのように成長したのだろうか。

初回から最終回まで直線の矢印を引いてみた。

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PC1(対人間)とPC2(言葉の強さ)が、ともに少しだけ上昇している。

彼らは大きな回り道をしたけど、長い航海を経て、目の前の人に少しだけ強く、だけど相手を思いやる余裕をもって、自分を伝えることができるようになったのだ。

 

追記

本文では「大人のいない世界で大人みたいに社会をつくる真似事をして」と書いたが、実のところ、最初から最後まで、昴治くんだけが大人だったのだと思う。

片意地張って生きたくないんだ。好きにしてたいんだ。ミスって落ちこんで、怒ることもあるけど。でもおれは、そんなおれでもいいと思ってる。たとえ、傷ついても。おれは、誰かを傷つけたくなんかないんだ。

だから、投降しようイクミ。

相葉昴治/Sere25「おれであるために」

*1:ついに発売が決定したようです!2017年10月27日です!めでたい!(追記 2017/08/13)

*2:「俺」などの頻度は高いが意味の薄い言葉や、助詞や助動詞などは適宜除外した。

*3:寄与率は順に9.2%と8.1%であった。

*4:Sere22(総集編)は外れ値。