宇宙逃避航海日誌

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ポケットの中の抗争/『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』(45話まで)の感想とリアルロボアニメの無情さの考察

鉄血のオルフェンズが面白い。モビルスーツはカッコイイし、戦闘シーンの作画も安定している。主人公のイオク様は毎週クジャン家の汚名挽回といった活躍をみせてくれるし、黒幕のマクギリスも回を重ねるごとに情けなくなりロリコン金髪仮面の正当な後継者に恥じぬ姿を(全裸ではなく半裸こそが赤い彗星を継ぐものだと)遺憾なく示してくれている。

そんなオルフェンズを僕は毎週とても楽しみにしているのだが、一つだけ腑に落ちない点がある。それは、現在の戦いが「マジで世界の覇権を賭けて戦ってるの?」という疑問だ。言い換えれば「九州地方の自治権レベルの争いじゃないの?」と思ってしまうのである。この肩透かし感の正体は何なのだろうか。

以下、現在のオルフェンズに関する違和感について考察し、その結論をリアル路線ロボアニメ一般に拡張してみることにする。

 

広がる世界ー変わらない戦闘規模ー狭くなる世界

オルフェンズのストーリーを一言でいうと「元・鉄砲玉の若頭の成り上がりサクセス・ストーリー(ただしサクセスするとは言ってない)」である。当初は地方の民間軍事会社の鉄砲玉であった若衆が結束し、様々な壁を乗り越えて自分たちの居場所を掴み取るストーリーであり、回を重ねるごとに豪華になっていく食事シーン(と寂しくなる食堂)が見どころの一つとなっている。

戦闘シーンに関しては、ビーム兵器に対して極めて高い防御力をもつテクノロジーが普及している設定がミソであり、女人禁制と言わんばかりの泥臭さで繰り広げられる実弾兵器を主体とする戦闘、それは否応なく男心をくすぐり、金属同士がぶつかり合う効果音と容赦ない三日月サンの駆るバルバトスにテレビの前の視聴者は心の旗をRaise your flag。ついでに有能すぎるデブとヒトの温もりを知った少年兵と恋を知った巨乳ギャルにもRaise your flag

しかし、このリアル志向の泥臭い戦闘シーン、致命的にサクセス・ストーリーと相性が悪いのである。なぜなら、こうした戦闘シーンは1〜2部隊同士の戦闘規模が最も魅力的であり、成り上がることで戦闘そのものの規模が大きくなると戦闘シーンの魅力が少なくなってしまうからである。大規模戦闘では基本的に広域兵器による戦闘が主であり、どちらかと言えばスーパー路線のロボットが活きるシチュエーションである。宇宙を埋め尽くす宇宙怪獣をビームで滅殺する(ただし軌道は気合で曲げる)のがカタルシスなのであり、リアル系で大規模を描くならアクシズの一つや二つは落としてもらわねば困るのだ(謎パワーで押し返されても困るけど)。

だが「マジで世界の覇権を賭けて戦ってるの?」の根底にあるのは他の理由である。それは、ギャラルホルンテイワズ鉄華団以外の人間や組織が作中でほとんど描かれていないことである。

例えば、オルフェンズの舞台がギャラルホルンという貴族階級と他の奴隷階級の二つにキッパリと別れた世界であれば、現在の戦闘が天下分け目の戦いと言われても納得できる。しかし、オルフェンズの世界では両組織の他に中間層が厚く存在することが示唆されており、それでいて作中では十分に描かれていないため、世界を賭けた戦闘にも関わらず世界を置いてけぼりにしているような居心地の悪さがある。したがって、バエルに乗ったマッキーが地球を背に剣を掲げても肩透かしであり(むしろ子供っぽさの演出として狙ってやっているなら見事である)それを討たんとするガエリオくんにも私怨を超えた大義が見いだせず、全体として小じんまりとした印象を受けるのである。

 

燃え上がれ闘志 リアル路線ロボアニメの宿命を越えて

僕は複数の勢力の武力と思惑が相互に絡み合う世界を舞台にしたロボアニメが大好きだ。舞台背景としての深く複雑な世界は、物語初期には心踊るスパイスである。しかし、主人公勢の影響力が大きくなるにしたがって、その深さや複雑さはシンプルになっていき(大抵は一つの大きな組織に統合されて)いつしか一部隊同士の争いが世界の命運を賭けた戦闘になってしまい、果てはガンダムファイトで決着がついてしまうのだ。

これは避けられない運命なのだろうか? ユニオンのフラッグとAEUのヘリオンと人革連のティエレンがジンクスに統合されたときの悲しみは再び繰り返されるのだろうか? 空を自由に飛び回るナイトメアフレームを見たときの侘しさから人は何も学ばなかったのだろうか? 頭部を破壊された者は失格となるしかないのだろうか? 嘘だと言ってよ、バーニィ

と、ここまで考えたところで、初代ガンダムは上手いこと折り合いをつけたのではないかと気づいた。すなわち、主人公たちの物語の決着(アムロ・レイの成長とシャアとの決着)と世界の物語の決着(一年戦争終結)を同じにしなかったのである。さすがは初代ガンダム、リアル路線ロボアニメの元祖(諸説あると思います)である。

 

我が心 明鏡止水~されど戦闘シーンは烈火の如く

色々と書き殴ってみたものの、オルフェンズを毎週とても楽しみにしているのは本当である。戦闘シーンのバルバトスはめちゃカッコイイし、声優の迫真の演技もあって人間ドラマでは心を動かされるシーンも多い。そもそも物理的な制約のなかで毎週あのクオリティの映像作品が観られるということ自体が凄いことだし、制作に携わる全ての人に感謝の念をビデオレターにして送りたい。あと最終回のタイトルは「鉄華団大勝利 希望の未来へレディ・ゴーッ」にしてほしい。頼むから上手く終わらせてほしい。以上、よろしくお願いいたします。